\錦2丁目 SDGs WEEKs 2023〜七番SDGsトークプレイスレポートその①/

天然染料からまなぶ素材を選ぶ暮らし

日時:2023年10月27日(金)18:00-19:30
会場:スペース七番(スペース2+3)
【ゲスト】葭野あかねさん(瀧定名古屋株式会社 婦人服地82課テキスタイルデザイナー)
【運営】錦二丁目エリアマネジメント株式会社/「なごや環境大学」実行委員会

 

■概要
農家から野菜や果物の食べられない部分を買取り抽出した天然染料と、適切な化学染料を使用して、地域や季節ごとの「生きている色」を一緒につくるプロジェクト「ハタケライフカラー」を展開する、瀧定名古屋のテキスタイルデザイナー葭野さんと一緒に、服飾にまつわるSDGsな未来について話し合います。


1027日金曜日、錦2丁目 SDGs WEEKsトークプレイス企画の第一弾として行われた「天然染料からまなぶ素材を選ぶ暮らし」では、瀧定名古屋のテキスタイルデザイナー葭野あかねさんをお招きして、服飾の観点からSDGsについて考えるトークプレイスを開催しました。当日は、服を作る・売ることを生業とする方から、純粋に服が好きだという思いを持つ方まで、アプローチは様々ながら、共通して服に対する思いを持つ参加者の方が集まり、相互的な意見交換の場となりました。

 

葭野さんからは、まずハタケライフカラーの取り組みとして、野菜や果物からどのように染料ができるのかという道のりを、マスクメロンを例にとって紹介していただきました。

はじまりは、畑から。農家さんの元で作物の栽培が始まります。
水やりや摘果などを経て収穫。栽培には何か月もかかる作物も、収穫はものの30分で終わってしまうこともあるといいます。
染料の抽出。時間をかけて、染料を煮出していきます。興味深いのは、ほうれん草から黄色が抽出されたり、ココナッツからピンク、ニンジンの葉からは黄色など、見た目からは想像できない色が染料として現れたりする点です。どの野菜から何色が出るのかは、染色者も、生産者ですらもわからない。また、自然由来の染料ということで、はっきりとした濃い色は出づらく、ほとんどが淡い色になります。しかし、そのような不確実性、不完全性こそ、確実に設計できる人工物にはない、天然のものを扱うがゆえの特別感、楽しみとして愛していけたらと感じます。

抽出した後の出がらしは、染色工場さんが自主的に農業高校さんと協力して、堆肥に再利用しているといいます。この堆肥が、再び新しい作物へとつながっていくのです。
抽出された染料は、色の持続をサポートするための適切な化学染料と合わせて、生地へと染色されます。その生地で作られた服は、農家さんにもユニフォームとして渡しているそうです。「メロンの農家さんが、メロンでできた洋服を着ていたら素敵だと思って」と、とても楽しそうな笑顔でお話しされている葭野さんの姿がとても印象的でした。

ハタケライフカラーの特徴的なこだわりは主に2つ挙げられます。
1つ目は、食材の食べられない部分だけを使うという点です。
しかし、忘れてはいけない大事なこととして、服職業としての立場では「食べられない部分をどううまく使うか」という方向で話を進めがちですが、そもそも農家さんは「食べられない部分をどうやったらなくせるか」あるいは「食べられる部分をどうやったらより良いものにできるか」という方向に熱量を注いでいるものです。

その点の違いを心に留めながら、生産者さんと向き合っていかなければならないという言葉からは、素材を提供してくださる農家の方への敬意が伺え、異業種の方と関わる際に必要な心持ちを学ぶこともできました。

2つ目は生産者さんの顔が見えるという点です。
布や服を製造する立場として、自らが扱う素材がどのようにして今、自分の手元にあるのか。どんな人のどんな思いがあるのかを知ることは、自分がその思いを受け取り、次につないでいくのだという使命と、服への愛着へと還元されるのだといいます。
そして、作り手が受け取ったそれらの思いを消費者である私たちにどう届けるべきか。SNSでの発信をはじめ、皮を利用するための傷ついたオレンジを使ったジューススタンドといった、消費者も参加できる一種のイベントを開催するなど、様々な取り組みを試行されています。


■感想
今回のハタケライフワークのプロジェクトは、人から人へのつながりを大切にされているように思います。そして、それらを繋ぐのは、服そのものや、服を取り巻く未来への熱意であろうということも感じられました。好きだからこそ、衣類をもっと魅力的なものへ。もっと愛着の感じられるものへ。という作り手の方々の熱量を、自分のような消費者に、もっと知ってもらいたいと強く思いました。作り手の方の語る「服への愛着」は、自分が今手に持っている服一着がどのような物語の末に生まれたものなのか、どのような人のどんな思いが乗せられているのかを知ることで、より深められるものだろうと思います。社会を表すピラミッドの中で最も広い部分となるのは生産者ではなく、消費者でしょう。したがって、持続可能な社会の形を実現するための近道は、消費者に委ねられているといえるはずです。消費者である私たちが、買った衣服1着ずつに愛着を持ち、永く使っていくことが、ファッションの面からSDGsに取り組むうえで必要なことではないかと思います。(喫茶七番スタッフ – 野口はるか)